昨年1年間に転勤(引っ越しを伴う人事異動)を経験したサラリーマンは、60万4000人もいました(リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」2018年)。20歳から59歳の正社員の2%に当たります。このうち家族帯同は39%。単身赴任が63%です。会社は社員とその家族に対して、引っ越しや子どもの転校を迫ったり、離れ離れの生活を強いているのです。
転勤制度はワークライフバランスや女性の活躍推進にとって大きな阻害要因になります。
転勤があるのとないのでは、社員の人生設計そのものが大きく変わってくる、それくらい大変に大きな問題ですが、このことを真剣に捉えて真面目に考えている企業はほとんどないと思います。
転勤があると思うとマイホームを買うのも躊躇してしまいます。家を買ったはいいけどすぐに転勤となったら、単身赴任するか、持家を賃貸に出して家族で引っ越すかの選択になります。
新築であっても買った瞬間に家の価値は大きく下がっていますので、売るという選択肢は取りにくいです。
わたしの会社でも新築でマイホームを建てたが数ヶ月後に転勤となり、賃貸に出したけど結局自分たちが住めるようになったのは30年後で、すでに家はボロボロになっていたという笑えない話を数多く聞きます。
また、共働きの家族だったら、パートナーに与える影響も大きいです。相手の転勤についていくならば仕事を辞めなければならないですし、仕事を続ける選択をしたとすると、別居生活を余儀なくされるということです。
子供にとっても一大事で、転勤についていくことになったら転校を余儀なくされ、仲の良かった友達たちと引き離されることになります。次の環境にうまく馴染めれば良いですが、いい結果になるかどうかは運次第です。
転勤についていかないとなったら、当然ながら親との別居を余儀なくされ、片親に育てられることになります。その方が望ましいと思う人はほとんどいないと思いますので、子供にとってはネガティブな事象といっていいでしょう。
こう考えると、転勤は社員だけでなくその家族の人生にも大きな影響を与える大問題なのですが、当の企業側にはほとんどそのような認識はありません。
専業主婦が当たり前だった時代には、転勤制度もありだったかもしれませんが、今の時代には全くそぐわなくなって来ており、今後も後生大事に転勤制度を維持しようとする企業は、就活生からも見放されて、次第に衰退していく運命にあると思います。